ふるさと山梨を考える会
Think about our Yamanashi

山梨県知事への提言

掲載・平成18(2006)年7月31日
 
山梨県知事 山本栄彦殿

「ふるさと山梨を考える会」からの提言

「豊かで誇りあるふるさと山梨」の実現を求めて

 私たちは2003年山梨県知事選挙に立候補した井上幸彦氏の選挙対策本部役員であります。多くの同志と懇談会を開催したところ、出席者より知事選挙の話が多岐に渡りでました。これを受けて県政検証の勉強会を行い、その結果を知事及び県民に提言する事により、井上候補の目指した「豊かで誇りあるふるさと山梨」の実現に努力する事となりました。2006年4月30日「ふるさと山梨を考える会」を発足させ、県政検証の為の勉強会を行って参りました。検証結果がまとまりましたのでここに提言いたします。

 尚、大勢の同志に検証結果報告を知らせるために、「ふるさと山梨を考える会」の拡大勉強会を平成18年8月初旬に行いますので、私どもの提言に対する知事のご見解を8月5日までに、お示しくださいますようお願い致します。

平成18年7月31日
ふるさと山梨を考える会
会  長 前原 昇 
事務局長 溝口 秀男
常任幹事代表 野中 一二

提言骨子

 私たちは「国より地方への権限移譲、税源移譲が進む中での県行政のあり方」を一般県民の目線で県政検証を行うことにしました。井上候補が凍結を主張した県立博物館の運営状況を含め下記の4点を課題として検証しました。

  1.  県立博物館開館後の運営状況の検証
  2.  県の財政状況の検証
  3.  新たな学習拠点整備事業とPFI事業の検証
  4.  中部横断自動車道(増穂IC〜吉原JC間)の検証

提言1 県立博物館開館後の運営状況の検証

博物館の建設はやっぱりもっと考えるべきだった

前回、知事選挙の争点の一つとして県立博物館は建設凍結と工事中止の主張は、下記の4項目であった。

  1. 巨額の建設費に相応する収蔵物がない。
  2. 山梨の歴史と自然がテーマの博物館は観光の拠点とはなりえない。
  3. 研究、収蔵、学業の為の博物館であれば建設規模、場所とも再考すべきである。
  4. 県の財政状況に応じた施設にすべきである。

前回知事選挙では県立博物館の建設に対し、山本候補は賛成、井上候補は建設凍結、横内候補は工事中止と、意見が割れました。建設を支持した山本知事の誕生で博物館は開館した。しかし開館後の状況は井上、横内、両候補の主張した建設凍結、工事中止の根拠である上記が正しかったことを証明するような入館者の内容だと思われる。

特に入館者の半分以上(54%)が無料入館者という実態には驚きを感じ、運営手法に問題があると思われる。

団体入館者の少なさは「観光客にとって魅力のない博物館」だという事を如実に表している。

また見学した人の大多数の評価は芳しくない。その上に県民が負担する運営費は有料入館者一人あたり8千円以上もかかる。他県の類似施設から想定すると、2年後には有料入館者一人に1万円以上を県民が負担しなければならない施設となってしまう事が十分予測される。

それだけに作ってしまった施設の有効利用をする努力を最大限するように知事には求めたい。

特に巨額の建設資金を投じ、年間5億円近くの運営費も必要となっているので博物館の建設目的の一つだった観光振興の一助になるように、山梨県外の方が少しでも多く訪れてくれる運営方法を考えて頂きたい。

幸いNHK大河ドラマで本県の偉人である武田信玄公の軍師、山本勘助が主役として放映されるこの機会を活かして、県立美術館と同じように博物館も山梨の観光拠点のひとつとして県外の方に認めてもらえるようになれば県民も多く訪れる。

県の財政状況が逼迫してきている現状からは、なるべくお金を使わずに知恵を使って博物館の有料入館者を増やす責任が作った知事にはあると思います。

提言2 県の財政状況の検証

急いで下さい、県の財政健全化 知事の行政手腕が問われます

1.国は財政健全化を目指さざるを得ない状況である。そのために地方の自立を求めてきており、従来の国の指導に従って行政を行っていれば無難な行政運営が出来る状況ではなくなってきている。

2.山梨県内からの税収は国、県、市町村すべて合わせても7000億円以下しかなく、県内からの税収すべてを山梨県と県下市町村の行政予算に回しても足りない。

3.すなわち税源移譲が進むと県税収入は増えても地方交付税は減額となり県予算の収入全体は減ることになり県の財政状況はますます悪化する。

4.山梨県の財政状況の検証をするにあたり下記に近隣県との県債発行残高の比較をしてみたが隣接県と比べ大幅に悪化している。

県名人口発行高県民一人
山梨県88万人8900億円100万円超
長野県219万人1兆5468億円71万円
静岡県377万人2兆1556億円57万円
神奈川県883万人2兆7643億円31万円
埼玉県705万人2兆9185億円41万円
東京都は制度が違うため除外

結論

山梨県は人口が少ないため県民一人当たりの行政コストがかかる事により県民一人当たりの借金額が増える事はある程度はやむをえない。

しかし財政力指数も関東近県10県の中で最低であり、県の各種財政指数の全国順位も15年前に比べると大幅に悪化している。また経済指数も同様の実状からは従来と同じ財政運営をする事は許されない現状である。財政の健全化をしないうちに、これ以上の税源移譲が進むと財政破綻の恐れがある。

それに伴い県の税収を増やす努力を真剣にする事が望まれる。医療、福祉等を切り捨てることなく財政を健全化する努力を望む。

国から県へ権限移譲・税源移譲が進むと知事の裁量権が大きくなる。それだけに「知事の行政手腕が問われる時代」を考えた財政運営をしてもらいたい。

提言3 新たな学習拠点整備事業とPFI事業の検証

充実した図書館建設だけにして下さい

甲府市北口に建設を予定している「新たな学習拠点整備事業」は図書館だけではなく500人収容のホール、レストラン、カフェ、ギャラリー等の公共施設に民間施設も併設した大型箱物をPFI事業にして県の財政負担は230億円で作る予定になっているが、以下の点により見直す事を提言します。

* 500人収容ホールは甲府市内に県立文化ホール・文学館・甲府市民会館と3箇所あり、その稼働率には余裕もあります。また類似施設が地場産業センターとアイメッセの中にあるのでそれらの有効活用を図れば不要です。

* セミナー室・企業支援スペース・集中ワークスペース・ギャラリー・大学コンソーシアム事務室は県庁周辺、甲府市内に稼働率の低い公共施設が数多くあるのでその有効活用を考えて財政負担の軽減を図るべきです。

* 周辺に民間施設があるレストラン、ショップ関係スペースは不要です。甲府駅周辺商店街の活性化につながるように既存民間施設の利用を促進するべきです。

* PFI事業者(県外大手)の民間施設は地元企業(飲食、貸ビル等)を圧迫する恐れがあります。PFI事業で作らずとも幾つか民間企業によりテナントビルの計画があります。

結論

図書館以外の施設は「既存公共施設の活用と民間施設の利用」をする事で新たに作らなくとも、目的は達成でき財政負担の軽減になります。

山梨県の財政は逼迫してきていて新しく作るほどお金に余裕がありません。今回整備するのは図書館と附帯駐車場のみとすべきです。

PFI事業は長期分割支払だけに慎重の上にも慎重にして下さい

* 公共事業をしたいが財政が厳しいので財源手当てが難しい、しかしPFI事業にする事で支払を長期分割にでき、他の公共事業よりやり易くなる。

* そのため本来は先に行うべき公共事業より、PFI事業は優先される危険がある。

* PFI事業は大型事業の方がその有効性が強くなるので、どうしても必要以上に大型事業になりやすい。

* PFI事業は契約期間と分割支払期間が長期となるので最初の支払いは楽だが、建設後は固定経費が増えて財政硬直化の一因となる。

* 財政が厳しい自治体ほどPFI事業は麻薬的な要素がある。

上記をふまえるとPFI事業の有効性は否定しないが、補助金制度を有効利用した上で、PFI事業は事業の必要性、優先度等を慎重の上にも慎重に検討したうえで決定すべきです。

提言4 中部横断自動車道(増穂IC〜吉原JC間)の検証

開通すれば一番得をする静岡県は負担をせず
なぜ山梨県だけ320億円もの負担をするのか

今までの疑問 (中部横断自動車道路増穂IC〜吉原JC間)

 何故、中部横断道は山梨県だけ県民負担のある新直轄方式になったのか?

 何故、開通すれば一番恩恵を受ける静岡県は費用を負担しないのか?

 何故、福井県(若狭道)は負担なしで高速道路を作れることになったのか?

 何故、山梨県も負担のない有料方式にできなかったのか?

上記の疑問を検証すると静岡県は自治体首長や地元経済団体が協力して中日本高速道路(株)に対し、啓発活動の協力や陳情をしていた。国土交通省にも陳情していた。福井県は原子力発電所があることを理由に有料方式での建設を希望し、知事を先頭に関係団体が国土交通省等に陳情をした。
しかし山梨県は担当課長に交渉を任せきりだった。

中部横断自動車道は山梨県民が必要としているだけではなく、中央道と東名、第二東名との連結高速道路、災害時の迂回高速道路として必要性の高い高速道路である。開通の恩恵を一番受ける静岡県は、物流拠点としての清水港の利用度が飛躍的に高まり、観光、産業両面では長野、新潟、北関東と移動時間が大幅に短縮される事となる。建設促進運動に最も熱心だったのが静岡市(清水市)、静岡県中部の経済界だったことも当然だった。福井県が民間会社の原発がある事を理由に有料方式を希望するなら山梨県は国防の為に北富士演習場を提供している。ましてや広域的な高速道路の必要性は中部横断道のほうが若狭湾道よりはるかに高い。それなのに若狭道が有料方式で中部横断道が山梨県だけ新直轄方式になったのは、知事の交渉力不足、政治力不足、努力不足と言わざるを得ない。

また中部横断自動車道の必要性、利便性は山梨県民より静岡県他、県外利用者の方が高い高速道路である。山梨県が財政負担をせざるを得ないのなら、静岡県も負担してもらう方法(新直轄区間を静岡、山梨にまたがせる)で交渉することを知事として当然やるべきだった。

新直轄方式を決める国幹会議(国土開発幹線自動車道建設会議)委員に、国会議員10名のうち県選出国会議員が2名も委員になっている。また山本県政誕生の原動力となった有力国会議員もいる。巨額の財政負担がある問題だけに、山梨県知事はオール山梨の力を借りてでも、県が財政負担をしない有料方式の建設促進に最大限の努力をすべきだった。残念ながらテレビを見ても新聞を読んでも知事の努力した姿が見えて来ないい。

それでも新直轄方式を受け入れざるをえないとしたら

新直轄方式は高速道路を国と県の資金で建設し無料高速道路となる。県が財政負担をするからには県民が一番利用する区間を新直轄方式にすべきです。

* 山梨県民が峡南地域に行く時に無料で高速道路が使えるように。

* 峡南県民が通勤・買物、県庁に行くときは増穂まで無料で高速道路を使える事が増穂からの甲府経済圏の発展及び県民同士の交流を促進する。

* 県境から無料区間にする事は山梨県経済と山梨県民にとっては損です。
 だから増穂から無料区間にすべきです。

それなのに何故 六郷〜富沢間を新直轄方式(無料区間)に決めたのか

中日本高速道路案  増穂IC〜南部IC新直轄区間(無料区間)
    県の財政負担 360億円  知事答弁の換算で県民負担200億円

山本知事案     六郷IC〜富沢IC新直轄区間(無料区間)
    県の財政負担 320億円  知事の議会答弁は県民負担180億円

中日本高速道路案を国土交通省より伝えられた山梨県は検討の結果、上記の山本知事案を国土交通省に要望した。(NHK報道)

つまり知事は県民負担が20億円増えることを理由に無料区間を山梨県民が一番利用する増穂IC〜六郷ICから県民の利用が一番少ない南部IC〜富沢ICに変えてしまった。

これでは45年後に高速道路が全て無料になるまでの間に、山梨県民は高速道路料金を何百億円も余分に払う事になると推測される。

県選出国会議員・県議会議員に相談なく県民に情報を公開せず一部県庁幹部と知事だけで決めた為に、県民負担は20億円減ったけど県民は将来に渡り大きく損をする事となる。

多角的な検討をせずに予算面だけで決めたのか?県の行政に一番大事な県民の利益(費用対効果)を忘れ「どんな方法でもいいから中部横断自動車道の早期整備」を希望し「山梨県民や山梨県経済の為には、どのように中部横断自動車道を早期整備することが一番良いのか?」という視点が欠落していたと言わざるをえない。

しかし今からが大事なので下記を提言します。

* 早く全線を開通させる為に中日本高速道路(株)と国土交通省の高速道路建設予算から中部横断自道車建設費を他の路線より優先して獲得する事。

* 今からでも遅くないので増穂ICから無料区間にする事。

* 国土交通省と交渉し県民負担を最大限に軽減する努力をする事。

平成18年7月31日
甲府市下飯田4丁目10-22
電話番号 055-232-0411
FAX番号 055-232-0412

ふるさと山梨を考える会

会  長   前原 昇