廃棄物最終処分場とは
廃棄物最終処分場の必要性
人々が生活していく上で、廃棄物は必ず発生します。現在は、廃棄物を再資源化する中間処理技術が進歩したことにより埋立廃棄物の量は年々減少しています。しかし、全ての廃棄物を再利用(リサイクル)する事は、技術的にもコスト面でも不可能な状況です。
そこで、埋立てをして最終処分する最終処分場は必要な施設です。ちなみに日本最古の埋立処分場は縄文時代の貝塚だったと言われています。
最終処分場のなかった山梨県の埋立廃棄物は、ほとんどを県外の民間最終処分場に委託処分してきました。このため埋立廃棄物処分の輸送コストが高くなり、多額の費用を県内自治体と企業は負担してきました。
試算すればわかるように、他県と同じ処分料金の廃棄物最終処分場が県内にできれば年間7万〜8万トンを県外処分場に頼る山梨県の自治体や企業は、輸送コストだけで年間4億円〜7億円の処分費用の軽減に繋がるはずです。輸送コストを軽減するには、管理型最終処分場だけでなく安定型最終処分場も県内につくる必要があるのではないでしょうか。
廃棄物の処理責任
廃棄物処理法では、廃棄物は私たちの日常生活から発生する一般廃棄物と事業活動から発生する産業廃棄物に区別されます。この廃棄物は、排出者が処分責任を負わなければなりません。基本的に一般廃棄物は自治体、産業廃棄物は排出事業者に処分責任があります。しかし、自分(自力)で処分できない場合は委託する事が可能です。
つまり、廃棄物最終処分場事業者は委託されて、はじめて埋立最終処分を行うため、委託した廃棄物により問題が生じた時は、この廃棄物を委託した自治体、排出事業者が最終責任を負わなければなりません。
廃棄物最終処分場とは
一般廃棄物の最終処分は一般廃棄物最終処分場。産業廃棄物は産業廃棄物最終処分場で処分しなければなりません。また、廃棄物の中で危険度の高いものは「特別管理一般廃棄物」と「特別管理産業廃棄物」に分類されます。
最終処分場は、以下の3つに分類されます。- 1.安定型廃棄物最終処分場
- 廃棄物を埋立処分する廃棄物最終処分場は安定5品目を埋立処分できる
- 2.管理型廃棄物最終処分場
- 危険度が一定基準以下の特別管理廃棄物を埋立処分できる
- 3.遮断型廃棄物最終処分場
- 一定基準以上の特別管理廃棄物を埋立処分する。
最終処分場政策の転換
国の廃棄物最終処分場政策の変化
廃棄物最終処分場の主管法令は、昭和45(1970)年に清掃法を全部改正し、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に改正されました。しかし、高度成長期の経済優先主義の流れの中で、現在からすると考えられないような緩い規制の法律でした。
この基準で建設された廃棄物最終処分場の一部が公営、民営に係わらず環境汚染問題を引き起こし、それが引き金となり最終処分場建設に対し地域住民の反対運動が強くなっていった経過があります。また、国が安全基準強化と不適格業者排除のため法律改正を昭和62(1987)年まで何度も行った結果、最終処分場業者は法律をクリアーするため、多額の資金を投入して設置許可申請をしても、地域住民の反対運動により許認可を得る事が難しくなってきました。
このため最終処分場の新規設置が減少したことで、最終処分場の埋立残余量が不足する事が懸念されてきました。また、廃棄物の不法投棄が社会問題となり、国は平成3(1991)年に都道府県(自治体)が廃棄物処理センターを建設する際に、国および地方自治体が、税金を投入して最終処分場(公共関与による最終処分場)を造れるように法令改正を行いました。
住民の環境意識が高まり、最終処分場の安全性向上が急務だったため、平成3(1991)年から平成18(2006)年まで毎年、廃棄物処理法の改正を行ってきました。特に平成9(1997)年の改正により最終処分場の設置基準が強化され、平成18(2006)年は埋立終了処分場の管理費用まで法律で担保するように改正されました。
また、環境意識の啓蒙と法制度を定めてリサイクルを推進した結果、平成17(2005)年の全国の最終埋立処分量は平成3(1991)年の1/4 位まで減ってきています。
廃棄物最終処分場の安全性の向上
廃棄物最終処分場は、昭和45(1970)年の基準で設置した処分場が基準で設置した処分場が環境汚染問題を引き起こしたことにより、危険な迷惑施設のイメージと不適格(不良)業者による杜撰な管理・経営や不法投棄等により、民間事業者に対する不信感を多くの国民が持ってしまいました。しかし、平成9(1997)年〜18(2006)年まで、毎年行った法令改正により管理型最終処分場の安全性は飛躍的に高まっているのも事実です。改正以前の管理型最終処分場が起こした問題は、このような問題が起きないように改正された法令を守れば絶対に起きないように定められています。
環境破壊の懸念
- 遮水シートの破損による地下水汚染問題は
- 管理型処分場の浸出水の漏水による地下水汚染問題は、遮水技術の新工法や自己修復型遮水シート等の開発により飛躍的に進歩しています。また、二重遮水シート等の設置により、安定した地盤の上では、安全性は担保されています。
しかし、地質構造によっては、遮水シートの破損による地下水汚染の可能性もないとは言えません。敷地内に「検水井」の設置が義務付けられており、浸出水の漏水が万が一起きたときには、早期に発見することで迅速に対処し周辺地下水の汚染を防ぐように法令が改正されています。 - 有毒ガス、臭気、有害物質の飛散による環境破壊は
- 法令、規則を順守して管理を行えば、現在の技術では有り得ない問題です。
- 処分場からの排水による河川の汚染は
- 廃水を飲用水にまで浄化できることが実証されている現在の水処理技術では有り得ない問題です。
- 交通量増加による環境破壊は
- 地域の道路事情により異なりますが、交通量が増えた事による影響は出るでしょう。適切な交通制限等により影響を最小限に抑えることが必要です。
- 民間事業者への懸念
- 民間事業者は法令を守らざるを得ないように罰則が強化されています。
- 不適格(不良)業者による処分場設置と経営は
- 厳格に改正された法令により経営は、過去に問題を起こした事業者や前歴のある事業者は、処分場経営ができません。
- 杜撰な処分場管理運営は
- 法令により管理基準を厳格に定めてあり、杜撰な管理では事業停止になります。
- 危険な埋立廃棄物の持込は
- マニフェスト、搬入物事前分析制度等により、危険な廃棄物は事前にチェックされて、持ち込みができなくなっています。
- 建設途中の経営破綻は
- 設置許可の審査時に、資金調達能力は厳しく審査され、その上で資金調達能力が証明されています。
- 営業中の経営破綻は
- 設置許可の審査で営業計画・経営計画は、厳格に審査をしているため法令を順守して、営業を行えば経営破綻する懸念はありません。
- 処分場閉鎖以降の経営破綻は
- 処分場閉鎖後の管理に関わる必要費用は、法令により処分場営業開始から閉鎖までの間に、定められた積立金を積立てる事が義務付けられています。もし、経営会社が管理義務を怠った場合は、その積立金で管理を継続する制度になっています。
法令違反をすることは、民間事業者にとり営業停止等の罰則で、死活問題になるように法令が改正されています。そのため公共より民間事業者の方が、法令を順守することに真剣にならざるを得ないのではないでしょうか。
安全・安心な廃棄物最終処分場に必要な条件は
過去の管理型最終処分場が起こした環境破壊、汚染等の問題は厳格に改正された法令と飛躍的な技術の進歩により安全性が向上し、新規に設置する現在の処分場では公共、民間を問わずに安心、安全は担保されています。
しかし、地質構造による不同沈下、地盤変動により断層等での遮水シートの破損は、現在の遮水技術をもってしても防げません。ドイツでは廃棄物埋立処分場の設置には、地質構造を第一条件としているように安全、安心な廃棄物最終処分場を設置するためには安定した地質構造の土地である事が最優先必須条件だと思われます。
一方で安定型処分場に関しては、設置基準の法令を厳しくするべきとの意見が環境学者の間では言われています。
山梨県の廃棄物最終処分場行政
公共関与による最終処分場設置の推進
山梨県は埋立廃棄物のほとんどを県外の民間処分場に委託してきました。平成3(1991)年10月、国が廃棄物処理法を国および地方公共団体が廃棄物処理センターを設立できるように法改正したので、山梨県は廃棄物の自県内処理をするため県内5圏域に公共関与の最終処分場を建設する計画を立てました。
県は最初に明野管理型最終処分場の建設に向け動き始め、山梨県環境整備事業団を設立。平成14(2002)年11月に国から、全国で15番目となる廃棄物処理センターの指定を受けています。
現在、明野管理型最終処分場は完成に向け工事が進んでおり、2番目の施設として境川管理型最終処分場計画が進められています。
山梨県は民間処分場排除の方針なのか?
山梨県のホームページ(森林環境部・環境整備課)には「公共関与による最終処分場の必要性」に関して下記のような記載があります。
- ● 巨額の資金を必要とする最終処分場を民間が行うと資本力、技術能力と健全な事業経営を両立するのは極めて難しい
- ● 民間事業者は不安定な経営が原因で廃棄物の不適正処理を行う例が多い
- ● 民間事業者は採算性のため県外からも埋立廃棄物を搬入するため、長期間は県内廃棄物の処理には繋がりづらい
「民間事業者では問題が多いため県(環境整備事業団)で最終処分場の建設、運営、管理を行い他県からの埋立廃棄物は受け入れない」と考えていると解釈できます。
技術能力は経験値や新規技術の取得方法等を含めて、民間事業者の方が高いし、廃棄物の不適正処理事例は激減しているのに何の目的でこのような偏った考えを記載するのか解せません。
県内外の埋立廃棄物を引き受ける民間事業者の最終処分場建設に対して否定的な考え方は、長年にわたり埋立廃棄物の処分を県外の民間処分場に委託処理をしている山梨県は、自治体として道義的にも信義的にも問題があります。
公共関与の最終処分場を県内5圏域に設置するために民間処分場排除の必要を感じてホームページを利用し、不適正な記述を記載しているとしたら問題です。
15年以上前に作った計画が、明野処分場のように多額の県費を必要とするならば県の財政状況を考えても県費負担の必要が無い民間処分場を誘致すべきです。
最終処分場の設置・運営・管理は法令を守れば安全が担保されるように厳格なまでに法令改正がされてからは、法令違反は民間業者にとって死活問題となるため、公共よりも民間のほうが法令を順守すると言っても過言ではありません。また、県は法令を守るように最終処分場を監視し指導監督する責任があります。
県民は負担がなくて料金の安い安全な最終処分場を必要としています。
明野最終処分場
山梨県環境整備事業団が事業主体で国費5億円弱、県費約20億円の補助を受けて予定利用料金収入約47億円で最終利益1千8百万円の黒字見込みの事業として平成21(2009)年5月の営業開始に向け建設が進んでいます。
埋立容量 20万立米 埋立重量 23万トン 埋立期間 5.5年 利用者 山梨県内発生埋立廃棄物の内の受入品目 埋立予定内訳 建設ガラ等安定5品目 56% 汚 泥 25% その他 19%
平成21(2009)年2月の山梨日日新聞紙上で報じられたように、廃棄物の搬入量が計画より少なくなるのではと心配されています。平成20(2008)年12月県議会での質問に、県は「利用料金は関東近県の公共関与最終処分場の平均利用料金で設定した」また「山梨県の埋立産業廃棄物の90%が利用する予定」と説明しました。これは無謀な事業計画と言わざるを得ません。
環境整備事業団が行ったアンケート調査の調査内容を見ると「民間処分場より高ければ利用しない業者」と「安くても利用しないと回答した業者」が60%以上の結果であるにもかかわらず、アンケートの調査結果を90%以上が明野処分場を利用すると無理やり結論付けています。
料金収入が減ると赤字になり赤字は県費で負担せざるを得ません。各種データーから予測すると20億円前後の赤字の発生が予測されます。
結果として明野最終処分場の県民負担は40億円位になると思われます。
身延民間処分場に対する県の行政判断
身延一般・産業廃棄物最終処分場について山本前山梨県知事は株式会社山の都に対して平成18(2006)年2月に設置許可を出したのですが、建設工事に必要な林地開発許可申請と砂防指定地内行為申請を同年5月に不許可とし、法定外公共物使用許可申請は、依田光弥前身延町長が平成18(2006)年1月に不許可として計画が頓挫している状況です。現在、株式会社山の都は、不許可を不服として法廷で争っています。
事前協議を長期間行い、主管法と関連法で判断が違うならば、なぜ山梨県は申請書を受理したのか理解できません。司法判断如何によっては、山梨県には賠償責任が生じてしまいます。
不許可の主な理由は、用地の一部が借地であり、権利者21名全員の同意が必要な「共有入会地」であると、山梨県および身延町が判断したためです。
共有入会地の判断は、身延町が平成17(2005)年3月山梨県に提出した「意見書」に、山梨県の指導により記入したことから始まっています。身延町にとって記入する必要の無い事を山梨県の誰が、何のために入れるように指導をしたのでしょうか?不適正な指導だったと言わざるを得ません。このことにより山梨県及び身延町に賠償責任が生じるならば、不適正な指導、判断をした県・町の関係者が個人で賠償責任を負うべきです。
重大な過失や故意による損失に、地方公務員には個人賠償責任があります。
最終処分場行政は改革が必要
身延民間処分場の例に見られるように、同じ許可権者(知事)が、同一案件で指導要綱に基づき事前協議をしておきながら、主管法と関連法で異なる判断をして業者に行政裁判を起こされたのは制度に不備があるのではないでしょうか。行政裁判の如何によって賠償責任となる可能性が生じるような、最終処分場の許認可おいて日本全国にこのような事例はありません。山梨県の最終処分場の許認可は国の法律以外は県の内規(指導要綱)で行っており、行政の都合により、都合よく変える事ができる内規は公務員の裁量権の乱用につながり易いはずです。それを防ぐには行政の透明性を高める必要があるのではないでしょうか。
行政の透明性を高めるためには裁量権の大きい内規(指導要領)を条例に変えるべきです。議会同意の必要な条例、細則であれば行政の都合で勝手に変える事はできません。
過去においては、山梨県に条例がない(ルールが曖昧だった)ために、民間事業者は最終処分場を造りづらい反面、不適格事業者の県内進出防止になった一面もありました。しかし、不適格事業者排除と安全性確保のために厳格なまでに改正された今の法令規則に基づいて、設置、管理を行う処分場であれば民間最終処分場を廃棄物の自県内処理の為に誘致するべきです。民間最終処分場ができると県内企業、自治体の廃棄物処理費用の軽減になります。そればかりでなく税収増、雇用の拡大、企業誘致にも繋がります。
そのために山梨県は、県民の安全・安心を守るためにしっかりとした条例を定める必要があります。国の法令規則より厳しい排水基準や安全性確保の装置設置が、県民のために必要ならば条例等で指導すれば、安全性は、県(公共)の処分場も民間処分場も同じです。
民間処分場ができると、行政の天下り先確保のために、公的関与の最終処分場設置計画に都合が悪く、それで、条例を策定したくないとしたならば許される事ではありません。
民間処分場だけでは、埋立需要を賄いきれない恐れがあって、国は公的関与の最終処分場を造れるように法令を変えたのであり、民間より公的関与の処分場が望ましいと言っているわけではありません。
処分場経営は、民間のエキスパートが、用地選定から企画する民間処分場の採算性と処分場経営には素人の公務員が企画する公的処分場の採算性では比較するまでもありません。県費20億円を使って明野処分場が赤字になるとしたらお役所体質で事業を進めようとした結果です。
また、法令規則に基づき県が厳しく指導監督を行う民間処分場の方が、身内に甘い体質で、指導監督をする恐れのある公的処分場よりも安心・安全と言えるのでないでしょうか。
民間処分場だけでは埋立需要が足りないため公的関与の処分場を造る都道府県はありますが、多くの県は民間処分場だけで公的関与の処分場は造りません。山梨県のように公共関与処分場だけで自県内処理をしようとしている県は、ほとんどありません。
厳しい経済状況の中で、歳出の削減努力をしている山梨県の財政状況を考えても県費を使う公的関与の処分場よりは、税金を地域に納め、それが地域活性化につながる民間処分場のほうが県民に寄与すると思われます。