ふるさと山梨を考える会
Think about our Yamanashi

知事回答に対する見解

掲載・平成18(2006)年8月11日
 

提言に対する知事からの回答への見解

 本会(ふるさと山梨を考える会)の提言は県民として「誇れるふるさと山梨の実現」を目指すために裏づけとなる資料やデーターを勉強して公平、中立の精神をもって作成したものである。それに対して知事からの回答は偏ったデーターや偏った解釈を基に作成されている。山梨県のリーダーとしての知事の姿勢を疑うものである。知事の回答を基に事実を明らかにする。

県立博物館

 入館者数に関しては本会の検証で他県の類似施設を参考にすると初年度12万人、次年度10万人、3年目は8万人、4年目以降は6万人と入館者数が減っていく事が予想されるので作った者の責任として確りとした施設運営を求めたのである。

 入館者アンケートを6〜7月に行ったとしているが1ヶ月1万人位の入館者に対し219人ということは入館者の1〜2パーセントしか答えておらず「展示に関しては9割の方からほぼ満足している」という県の回答は自画自賛のための調査を行ったとしか思えない。実際に博物館へ行った県民が120億円の建設費と毎年5億円近くの運営費がかかっている事に対し展示物の内容がふさわしいかどうか判断されると思う。

 また入館者見込みが達成できた事により「十分その役割を果たしている」と答えているが、低く設定した入館者見込み10万人が開館後8ヶ月弱の入館者実績(別紙参照)に基づき予想すると13万人に達する。しかし県の入館者見込み10万人のうち、県内小中高生27,000人、県外からの観光客29,000人は入館者予想が13万人になっても達成できない。つまり博学連携と郷土山梨の国内外への発信という巨額の建設費を投入する建設理由が目的を果たしていない事実がある。10万人の目標が達成できたのは高齢者、障害者、その他(解らない入館者)の無料入館者が6万人以上になると思われるおかげで、知事にとってうれしい誤算だったと思われる。

 また他県の博物館との比較に古い博物館を対象に比較するとは情けない。知事が比較資料として出すのなら比較が公平に出来るように建設費用、建設時期等も記載するのが当たり前だろう。また、どうせ比較するのなら本会では解っていてもしなかった長崎、滋賀の最近開館した博物館と比較してもらいたい。批判をかわす為に、作為的な比較対比をしたといわれても仕方ないと思う。

 結果として費用対効果の悪い箱物行政を行っているといわざるを得ない。

県の財政状況

財政指標

 財政指標の理解が知事と総務省では違うのか?知事は「財政力指数は人口規模の異なる団体をこの指標で比較する事で財政状況を把握する事は困難である」と答えているが総務省では地方公共団体の財政力の判断指標として財政力指数を「地方公共団体の財政力の強さを表す指数」としている。その他に財政構造の弾力性硬直度を判断する指標として経常収支比率があり、実質収支比率、地方債現在高の4つの指標で財政力を判断している。また各種財政指数(指標)は人口規模により有利不利がでる。

 本会ではこのうち財政力指数と地方債現在高を根拠に「財政の健全化」を提言したのだが知事は「財政は改善している」と経常収支比率、起債制限比率、実質交際費比率のデーターを示す事で答えているが、都合の良い指数だけ示しているといわざるを得ない。

経常収支比率
平成2年3年8年13年15年16年
全国平均68.769.283.788.989.192.4
山梨県62.564.577.284.384.486.8
本県順位6位10位6位7位7位2位

 過去15年間を見ると概ね6位から7位で推移している。平成3年の10位と平成16年の2位は特別な要因があったと思われる。知事にとって一番都合の良い数字を取って財政は改善している参考資料とした事は、事実を正確に答えようとする姿勢が知事には欠如しているとしか思えない。

 提言の県民一人当たり県債残高の指摘に対し、知事が人口100万人未満の7県で県民一人当たりの県債残高の比較をしたのは、人口の少ない自治体ほど一人当たりの行政経費がかかる為、一人当たりの県債残高も多くなるので同規模程度の県と比較したと思われる。しかしこれも比較により正確に判断するには下記のようにするべきである。

県民一人当たり県債残高(H16普通会計決算ベース、単位万円 万人)
和歌山県香川県佐賀県福井県山梨県鳥取県高知県徳島県島根県
残高65707194979999116141
人口105101.88782.588.660.98181.374.9

 上記の内、昔から財政状況の悪かった徳島県と公共工事を多く行った故竹下元総理の島根県を除き、山梨県より人口の少ない鳥取県と高知県が2万円しか多くないという事は実質的には山梨県が一番多い。しかも地理的条件は一番恵まれている。如何に山梨県民の一人当たりの借金が多いかわかる。

県債の状況

 知事の「臨時財政対策費や減税補てん債等を除いた通常の県債の残高は、ほとんど増加しておりません。」の回答は間違いでは?通常県債残高が平成12年度から17年度の5ヵ年で497億円増えています。山本県政になってからの3年間に335億円増えている現状に正確に回答しているとは到底思えない。それとも山本知事にとって335億円は大した借金ではないということですか。

行財政改革への取り組み

 職員数の純減、給与の適正化、削減について「行財政改革プログラム」の計画案で平成21年度末までに総職員数を712人純減すると述べている。しかし真剣に取り組んでいるのなら何故、今年2月に出した「県の財政中期見通し」の中で人件費が平成17年度と23年度で同額なのか理解できない。しかも平成18年度予算では人件費は増額となっている。19年度も前年より増額予定となっている。真剣に行財政改革をやる気があるとは思えない。

 公共事業等の計画的縮減の中で削減目標を掲げているが「新たな学習拠点整備事業」はPFI事業だから削減計画とは無関係とはいわないでください。PFI事業も県財政より230億円の負担を予定しているのですから。

 税源の涵養についてはミネラルウォーター税の導入も決断できない知事では期待が持てません。

県債発行の削減

 県債は「県債の状況」で説明したとおりです。また「平成18年度予算で通常県債発行額が県債元金償還額の範囲内になった」と述べているが平成18年度予算では492億円の財源不足がおきており、そのうち140億円を基金の取り崩し等で措置する予定となっている。つまり目標達成するために形だけ整えたが中身が伴っていない。簡単に言うと借金(県債)をすると県民にわかるので貯金(基金)を崩せば良いという事をしている。

通常県債許可額から通常県債元金償還額を差し引いた額の推移グラフを信用して計算すると山本県政4年間で118億円の県債の増加になっている。基金の取り崩し額は示してくれないが県の財政中期見通しでは平成17年度168億円、平成18年度140億円となっている。これから推計すると山本県政は「通常の県債残高はそれほど増やしていません」といっていながら335億円通常県債を増やし、山本県政になってからの借金(県債)と貯金(基金)の取り崩し額は700億円以上に上ると思われる。実質は県債を700億円以上増やしたと同じ。

新たな学習拠点整備事業について

・作りたい理由を述べているだけで答えとなっていない。

・教育施設、体育施設、警察施設等の新設、改築等作りたい箱物施設は沢山ある。

・中部横断自動車道の建設負担金も増穂以南で320億円が決まっている、上信越道との接続ルートも知事が北杜市の知事後援会の席上で推進する意向を示したので建設負担金が何百億円かまた県の財政負担が必要となるので、将来の財政状況を考えると本当に必要な施設だけに見直すべきだ。

・今の財政状況では公共事業ですると県の県債発行削減計画に支障をきたす為、PFI事業にして借金隠しをしたとしか思えない。

・ 我々も山梨県の財政状況が豊かなら複合施設を作る事に賛成します。

中部横断自動車道

1.中日本高速道路(株)は増穂インターから富沢インター間の採算性が低いこの区間の整備は著しく遅れる、もしくは建設自体を見送くる可能性があった。

2.山本知事は中部横断自動車道の早期着工、早期完成を国会議員、国土交通省、中日本高速道路(株)に対しあらゆる機会を通じ強く要望してきた。

3.昨年末に国土交通省、中日本高速道路(株)から増穂インターから富沢インター間は有料道路方式での建設は困難との方針が示された。

4.新直轄区間短縮の為に山本知事が先頭に立ち国会議員の支援を頂いて国や中日本高速道路と数回交渉を重ね最終的には国等が折れる形で決着をした。

5.今後も山本知事は先頭に立って国会議員や国等に県費負担軽減の為、積極的に働きかける。

知事の回答を要約すると上記となるが

1、は可能性を示しただけで知事が有料方式での建設にする為に努力した事が伺えない。長野県は知事がお願いしなくても佐久インターから新直轄事業で建設が決まった。

2、は知事として早期着工、早期完成を要望するのは当然である。

3、の知事の主張とNHK報道は違う。知事かNHKがうそを言っている。NHK特番では中日本高速道路(株)では増穂インターから南部インターまでの新直轄方式案(提言での変更案)を示している。

4、の知事の主張も新聞報道と違っている。国会議員では政治的に力があると思われる中島参院議員も堀内衆院議員も新聞インタビューで何も相談がないと語っている。

5、山本知事は先頭に立つという言葉を誤解しているのではないか。自身が先頭に立つという事は自分自身で相手と折衝して汗をかくことと思うが、NHK報道を見てもそのよう姿は一回もない。また多くの関係者に知事自身が新直轄問題で相手先に出向いたことは一度として無いと聞いている。今度は先頭に立って努力すると言われても信用できない。

・上記のように知事の回答は事実が不明朗な主張をしている。一生懸命やった、新直轄も仕方なかったので県民の負担軽減に努力したといいたいのだろう、もし本当に努力したにも関わらずこの結果ならば山梨県知事としての力量、能力、見識が不足しているとしか言いようが無い。

・本会は新直轄区間(無料区間)は県税投入による建設なので県民の費用対効果を考えて「増穂インターから南部インターまでを無料区間」に変更する提言を行った、しかし一番大事なこの問題からは逃げた回答となっている。

・多くの県民は有料方式の建設と思い建設推進に賛意を示してきた。別な人が知事だったら有料方式での建設、または南部インターから新吉原ジャンクション間を静岡県と山梨県が負担を分ける形での新直轄方式、山梨県だけ負担をするのなら若草インターもしくは増穂インターから身延インターを新直轄方式にする事が出来て、県の財政負担の軽減、また県民の負担軽減が出来たと思う。

・新直轄方式は建設費の負担のみならず完成すれば維持管理費の費用負担も発生するので県民の為に費用負担の軽減が上手に出来る力が知事には必要だ。

総括

知事の回答を検討すると公正なデーターに基づいた正直な回答とはなっていないと思う。

特にひどいのは財政状況で
①普通県債は18年度で増加から減少に転じていて健全な財政運営をしている。
②職員数は平成21年度までに総計で712人純減させ、給与の適正化・削減も行っています。

確かに普通県債の発行額抑制はしている。しかしその為に歳入不足がおきて基金の取り崩しをしている。いわば目に見えてわかる県債発行額や財政指数を良く見せる為に粉飾しているようなものだ。

粉飾したので回答の平成16年各種財政指数が良くなっている。県の財政中期見通しでは国がこれ以上の交付金削減をしないと仮定し平成18年度の現行制度により歳入を推計すると歳入不足(要調整額の独自措置分)は毎年おきて平成23年には227億円にも達すると予想していて県財政の将来見通しは暗い。

しかし現行制度より国からの補助が増える事は常識的にありえない。現行制度より減った時は山梨県の歳入不足は増えて財政見通しは真っ暗になる。

然るにいかにも総職員数を712人純減して人件費の削減をするかごときの知事の回答だが県の作成した財政の中期見通しでは平成23年まで人件費はまったく減っていない。

それなのに230億円もの箱物事業をやろうとしているし、峡南地域の票が欲しいためなのか中部横断自動車道は作る事が最優先で、作る事により山梨県がどう変化するか真剣に考えようとしない。挙句には北杜市の票ほしさなのか、安易に上信越道との接続中部横断自動車道の推進を表明した。山本知事では新直轄方式でやらざるを得ないとすればまた何百億円も財政負担がかかる。

 上記より山本知事の行財政改革は見かけだけで真剣に県職員の削減、人件費の削減、公共事業の選別等の歳出削減と県税増収対策等の歳入対策により行財政改革に取り組んでいるといえない。

 北杜市の山本知事後援会での中部横断自動車道上信越道接続ルート推進発言等を聞くと山本知事の選挙対策で県の事業執行が左右される不安すら感じる。

 道州制論議も本格化しようとしている今、道州制が導入された時に山梨県民が望めば東京都でも南関東でも受けてもらえるように今から財政の健全化と県内経済の活性化を進めなければいけない。

上記を考慮するととても山本知事に山梨県の将来を託す事は出来ない。

  1. ◇ 県立博物館開館後の運営状況の検証
  2. ◇ 県の財政状況の検証
  3. ◇ 新たな学習拠点整備事業とPFI事業の検証
  4. ◇ 中部横断自動車道(増穂IC〜吉原JC間)の検証