中部横断自動車道路
1.高速道路建設手法
高速道路は国土開発幹線自動車道建設法に基づき国会の議決で高規格幹線道路の予定路線として決定し、国幹会議(国土開発幹線自動車道建設会議)で基本計画を示し、高速自動車国道法に基づき路線の指定と整備計画を国幹会議で指定したものを国土交通大臣が決定する。整備計画のうち有料区間を道路整備特別措置法に基づき国土交通大臣が高速道路会社(旧日本道路公団)に施行命令をだし工事実施を行う。無料区間は平成15年5月の高速自動車国道法の改正により新直轄方式で国(国土交通大臣)が行う。
- 新直轄方式(無料方式)
- 建設資金の25%(沖縄、北海道を除く)を地方自治体が国に納め国が税金により建設する方式
但し山梨県は後進地域特例法により16%負担 - 有料方式
- 道路公団を民営化した高速道路会社が建設し料金徴収を建設財源に充当
- 国幹会議(国土開発幹線自動車道建設会議)
- 衆院議員6名、参院議員4名、学識経験者10名の委員で構成
輿石参院議員と小沢衆院議員が委員に就任
2.中部横断自動車道路建設決定経過
増穂〜新吉原間は有料方式で道路公団で建設予定であったが平成15年5月の高速自動車国道法の改正と道路公団(中日本高速道路会社)の再評価結果(平成16年)により中日本高速道路(株)は南部〜新吉原間を有料方式、増穂〜南部間を無料方式(新直轄方式)の整備方針を示した。
平成16年12月山梨県は県負担金を減らす為、国土交通省に増穂〜六郷間と富沢〜新吉原間を有料方式、六郷〜富沢間を無料方式(新直轄方式)での建設を希望。
平成18年2月の第2回国幹会議で山梨県の希望した増穂〜六郷間を有料方式整備区間に指定し国土交通大臣が整備計画を決定。
参照・中部横断道概要図、原図はPDFファイル 887KB3.中部横断自動車道開通による山梨県への影響
開通のメリット
郡内地方を除く山梨県内からの静岡市周辺と静岡市経由で他の地域への自動車による移動時間が1時間以上短縮できる。峡南地域から甲府方面及び中央自動車道への自動車による移動時間の短縮。
開通によるデメリット
静岡県から増穂町を経由して他の地域(他の地域からの静岡県中部)への自動車による移動時間が短縮することにより山梨は通過されるだけになりやすい。
経済への影響
高速交通網が出来ると移動時間の短縮に伴い経済圏の変化がおきる。特に峡南地域は甲府商圏への依存度は低下し、静岡商圏から物が流入しやすくなる。
山梨県と清水港や将来開設予定の静岡空港へ人と物の移動が安易になり山梨県の経済活性化につながることが期待される。
生活環境への影響
移動時間が短縮できることにより峡南地域は静岡市周辺と甲府盆地への通勤圏内となり過疎化に一定の歯止めがかかることが期待できる。
4.山梨県外地域における中部横断自動車道の利便性
静岡市周辺地域
清水港の利用度が飛躍的に上がる。長野、新潟、北関東との移動時間が大幅に短縮されることにより人と物の交流が盛んになる。
静岡市のアンケート調査では中部横断道が開通すれば8割近くが利用し、目的地は山梨県3割、長野県・新潟県等が7割だった。
長野、新潟、北関東
静岡中部と人と物の交流が盛んになる。
災害時のバイパス
中央自動車道と東名高速の連絡道路として災害時の迂回道路となる。
5.新直轄区間建設への山梨県の財政負担
整備計画決定案(山梨県案) 山梨県による試算
16%負担で320億円の内、交付税措置起債利用で実質180億円前後
中日本高速道路案
決定した26kmで180億円とすれば29kmで200億円前後
6.中部横断自動車道の通行量予測
国道52号の通行量 (別添資料参照)
中部横断自動車道の通行量予測 (事業評価の将来交通量による)
南アルプスIC〜増穂IC 有料 5,900台、無料 23,000台
増穂IC〜吉原JC 有料 6,600〜7,800台、無料 15,300〜21,400台
山梨県民利用予測
国道52号の通行量から中部横断自動車道の県民利用は増穂〜身延間が一番多くなる。無料高速は有料の2.5〜3倍利用が増える。
7.総括
中部横断自動車道は峡南地域住民を中心とした山梨県民の多くが早期開通を望んできた高速道路である。しかし開通すれば山梨経済圏域の縮小につながる危険性や、観光面では移動時間の短縮により観光客が山梨県を通過して他の地域へ往きやすくなり観光客の減少も危惧される一面もある。
開通の恩恵を一番受けるのは長野、新潟、北関東との移動時間が大幅に短縮される静岡県中部である。中部横断自動車道建設運動に最も熱心だったのが静岡市(清水市)、静岡中部の経済界だったこともうなずけることである。中部横断自動車道の必要性、利便性は山梨県民以上に県外の利用者の方が高い。
山梨県は上記を考慮するならば県選出国会議員の協力を仰いで国土交通大臣と中日本高速道路(株)に陳情し、有料方式での建設のため、最大限の努力をすべきだった。しかし現県政誕生の原動力となった堀内光雄衆院議員や中島真人参院議員の新聞インタビューを読んでもまったくその努力をしなかったといわざるを得ない。
新直轄方式(無料方式)で建設せざるを得ないとしても開通の恩恵を一番受ける静岡県の財政負担を求めて交渉すべきだった。
山梨県経済や生活環境への影響を考えると県税を投入して建設する新直轄区間(無料区間)は、最も多くの山梨県民が利用する増穂からなるべく短い区間を新直轄区間(無料区間)とすべきだった。
また国土交通省より平成15年12月の第一回国幹会議と平成17年2月の第二回国幹会議の資料として「整備手法に関する知事の意見」を求められたとき、県選出国会議員、県議会議員、経済界等の意見を広く聞いて検討の上、提出すべきだった。
結論として山梨県は「どんな方法でもいいから中部横断自動車道の早期整備」を希望した。しかし「山梨県民や山梨県経済の為にはどのように中部横断自動車道を早期整備することが一番良いのか?」という視点が欠落していた。
- 1.高速自動車国道の整備の現状【説明事項】
- (1)整備の現状
- (2)今後の整備手法
- 2.審議事項
- 2−1 国土開発幹線自動車道建設線の基本計画の一部変更について
- 2−2 新設及び改築に関する整備計画の一部変更について
- 3.今後の高速自動車国道の整備について【報告事項】
- (参考資料)
- 参考−1 国土開発幹線自動車道(国幹道)の整備について
- 参考−2 国土開発幹線自動車道の法的手続
- 参考−3 事業評価結果(平成15年11月28日公表
- 参考−4 整備手法に関する地方公共団体の意見(要約)
- 参考−5 新直轄方式に切り替わる区間の具体的な選定の考え方